「カバンの中のモバイルバッテリーから、突然煙が上がった」
そんな事故のニュースを、今年よく目にすると思いませんか。モバイルバッテリーやスマホ、携帯扇風機などに使われるリチウムイオン電池搭載製品の事故は、春から夏にかけて増え、8月にピークを迎える傾向があります。
製品評価技術基盤機構(NITE)によると、2021年から2025年までの5年間に通知されたリチウムイオン電池搭載製品の事故は2,140件。製品別ではモバイルバッテリーの事故が最も多く、ポータブル電源も増加傾向にあります。
さらに政府は、相次ぐ発火事故を受けてモバイルバッテリーの安全規制を抜本的に強化する方針です。第三者機関による検査の義務化や、製造段階での品質管理強化により、粗悪品の流通を防ぐ狙いがあります。
この記事では、なぜ夏に事故が集中するのか、政府が進める規制強化の内容、やってはいけないNG行動、買い替えるべき危険サイン、万一発火したときの対処法、正しい捨て方、安全な製品の選び方まで、いま知っておくべきモバイルバッテリーの安全知識をまとめて解説します。
先に結論|夏のモバイルバッテリーで絶対に避けたいこと
| 危険な状態・行動 | 取るべき対応 |
|---|---|
| 真夏の車内・直射日光下に置く | 短時間でも放置しない。涼しい場所で保管する |
| 触れないほど熱い | すぐ使用・充電を中止し、可燃物から離す |
| 本体が膨らんでいる | 使用せず処分相談。充電・圧迫・穴あけはしない |
| 普通ごみ・不燃ごみに混ぜる | 回収ボックスや自治体ルールに従って処分する |
この記事でわかること
✓ 発火事故が8月にピークを迎える理由
✓ 政府が進める安全規制強化の内容
✓ 夏にやってはいけないNG行動
✓ 買い替えるべき危険サイン(異常発熱・膨らみ・劣化)
✓ 万一発火したときの正しい対処法
✓ 正しい捨て方と、安全な製品の選び方
データで見る|モバイルバッテリー事故のいま
5年間で2,140件。製品別ではモバイルバッテリーが最多
まず、事故の実態を数字で確認しましょう。
【リチウムイオン電池搭載製品の事故データ】
・2021年〜2025年の5年間で、事故は2,140件
・事故発生件数は春から夏にかけて増え、8月にピーク
・製品別ではモバイルバッテリーの事故が最多
・ポータブル電源の事故も増加傾向
・対象製品:モバイルバッテリー、スマホ、携帯扇風機、ワイヤレスイヤホン、ノートPCなど
「たかが充電器」と思われがちですが、ひとたび発火すれば炎や煙が一気に出ることがあります。カバンの中、車内、寝室、電車内など、身近な場所で火災につながる可能性がある製品として扱う意識が必要です。
国も対策を強化。「3つのC」で事故を防ぐ
リチウムイオン電池による発火・発煙事故の増加を受け、関係省庁は2026年6月に「リチウムイオン電池総合対策ポータルサイト」を公開しました。事故を防ぐ考え方として、正しく選ぶ・丁寧に使う・正しく捨てるという「3つのC」が呼びかけられています。
| 3つのC | 意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| Cool Choice | 賢く選ぶ | PSEマーク・販売事業者・リコール情報を確認する |
| Careful use | 丁寧に使う | 高温・衝撃・圧迫・異常発熱を避ける |
| Correct disposal | 正しく捨てる | 普通ごみに混ぜず、回収ルールに従う |
政府が進めるモバイルバッテリー規制強化とは
第三者機関による検査義務化が柱
発火事故の増加を受け、政府はモバイルバッテリーの安全規制を抜本的に強化する方針です。
報道によると、経済産業省は電気用品安全法の政省令を改正し、モバイルバッテリーの製造業者を対象に、技術基準の強化や品質管理措置の義務化を進める方針です。そのうえで、NITEの調査をクリアした第三者機関による検査を経る制度を導入し、製造段階でのチェック機能を高める狙いがあります。
これまでモバイルバッテリーはPSEマークの対象である一方、消費者側から見ると、見た目だけで内部品質や製造管理の良し悪しを判断することは困難でした。第三者機関による検査が制度化されれば、粗悪品の流通を抑え、安全性の底上げにつながる可能性があります。
制度化までは「PSEマーク+販売元+リコール確認」が現実的
ただし、制度改正が実際に運用されるまでには一定の時間がかかります。そのため、消費者としては当面、次の3点を確認することが現実的です。
【購入前に確認したい3点】
・PSEマークが表示されているか
・メーカー名・販売事業者名・連絡先が明確か
・購入前後にリコール情報を確認しているか
特に、極端に安い無名品や、販売元の実態がわかりにくい商品は避けるのが無難です。今後、第三者検査制度が導入された場合は、「検査を受けた製品かどうか」も選び方の重要な基準になる可能性があります。
なぜ夏に事故が集中する?リチウムイオン電池の弱点
リチウムイオン電池は「高温」が大の苦手
8月に事故がピークを迎える大きな理由は、リチウムイオン電池が高温環境に弱いという特性にあります。
電池が高温にさらされると、内部で異常な反応が起こり、発熱・破裂・発火につながるおそれがあります。いったん内部で熱がこもり始めると、外から見ただけでは危険度がわかりにくいのも怖いところです。
特に危険な場所は「真夏の車内」と「窓際」
【夏の高リスク環境】
・炎天下の車内(短時間でも高温になりやすい)
・直射日光が当たる窓際(室内でも局所的に高温になる)
・締め切った暑い部屋での充電
・布団やソファの上など、熱が逃げにくい場所
「少しの時間だから」と車内に置いたままにするのは危険です。モバイルバッテリーだけでなく、ハンディファン、ワイヤレスイヤホン、スマートウォッチ、ポータブル電源など、リチウムイオン電池を使う製品すべてに共通する注意です。
やってはいけない!日常のNG行動
高温以外にも落とし穴がある
発火の引き金は、熱だけではありません。日常の何気ない行動にもリスクが潜んでいます。
【モバイルバッテリーのNG行動】
・真夏の車内・直射日光下に放置する
・落とす・強い衝撃を与える
・満員電車などで強く圧迫される状態でカバンに入れる
・布団や枕の下など、熱がこもる場所で充電する
・寝ている間、体のすぐそばで充電し続ける
・非純正・粗悪な充電ケーブルや充電器を使う
・膨らみや異常発熱があるのに使い続ける
特に見落とされがちなのが落下や圧迫のダメージです。外側に目立った傷がなくても、内部にダメージが残ることがあります。強い衝撃を与えた後に発熱・異臭・充電不良などが出た場合は、使用をやめましょう。
買い替えるべき危険サイン
サイン①:充電中・使用中に「触れないほど熱い」
充電中に多少温かくなることはありますが、「触れないほど熱い」は明確な異常です。
この場合は、すぐに充電・使用を中止し、可燃物から離した場所に置いてください。熱が引いても再使用は避け、メーカーや自治体の案内に従って処分・相談するのが安全です。
サイン②:本体が「膨らんでいる」
本体の膨らみは、内部でガスが発生している可能性がある危険サインです。
膨らんだモバイルバッテリーは、圧迫・落下・高温・充電によって発火リスクが高まります。「まだ使えるから」と充電を続けたり、無理に押し戻したり、穴をあけたりするのは絶対に避けてください。
サイン③:充電の持ちが極端に悪い・異臭がする
購入から年数が経ち、充電の持ちが極端に悪くなった場合も、劣化が進んでいる可能性があります。焦げたようなにおい、変色、ケースの割れ、充電中の異音などがある場合も使用を中止しましょう。
買い替えるなら「安さ」より「安全」で選ぶ
PSEマーク・メーカー・リコール情報を確認する
危険サインが出たバッテリーの延命は、火災リスクとの引き換えです。買い替えるなら、価格だけでなく安全性を重視しましょう。
【安全なモバイルバッテリーの選び方】
・PSEマークが表示されているか
・実績のあるメーカー・正規販売ルートの製品か
・極端に安い無名製品を避ける
・過充電・過放電・過熱・ショート保護などの記載があるか
・レビューで発熱・膨張・充電不良の指摘が多くないか
・購入前後にリコール情報を確認する
安全性を重視してモバイルバッテリーを比較する
買い替える場合は、容量だけでなくPSEマーク、メーカー、保護回路、レビューでの発熱指摘を確認して選びましょう。
※価格・在庫・容量・安全機能は商品により異なります。購入前にPSEマーク、メーカー、販売元、レビュー、リコール情報を確認してください。
モバイルバッテリーは、停電時のスマホ充電を支える防災グッズの主役でもあります。地震や豪雨への備えという意味でも、信頼できる1台を持っておく価値は大きいといえます。防災備蓄の優先順位は、こちらの記事でも詳しく解説しています。
▶ 災害時になくて困ったものとは?被災者の声から学ぶ本当に必要な備え
防災用の充電アイテムもあわせて確認する
停電時はスマホの充電確保が重要です。普段使い用と防災用を分けて備えると、いざというときに安心です。
※防災用に保管する場合も、長期間放置せず定期的に状態・残量・膨らみの有無を確認してください。
万一、発火してしまったら
まずは身の安全を確保。小型製品なら大量の水で冷却
もしモバイルバッテリーから煙や炎が出たら、最優先は自分と周囲の安全確保です。
【発火時の対処法】
1. まず離れて、周囲の人にも知らせる
2. 炎や煙の勢いが強い場合は、無理に近づかず119番通報して避難する
3. 小型のモバイルバッテリーで、火花や炎の勢いが収まってきた場合は、大量の水や消火器で消火する
4. 可能な場合は、再発火防止のため水をためたバケツに入れる
5. 消火後も自己判断で触らず、状況に応じて消防・自治体・メーカーに相談する
リチウムイオン電池は、消えたように見えても再発火することがあります。無理な初期消火よりも、避難・通報・延焼防止を優先してください。
意外と知らない「正しい捨て方」|ごみ収集車の火災にも注意
普通ごみに混ぜるのは絶対NG
使い終わったモバイルバッテリーを、燃えるごみや不燃ごみに混ぜて捨てるのは避けてください。
ごみ収集車や処理施設では、圧縮・破砕の際にリチウムイオン電池がショートして発火する火災が問題になっています。自分では「小さな電池1つ」と思っても、地域のごみ処理や作業員の安全に大きな影響を与えるおそれがあります。
回収ボックス・自治体ルール・メーカー案内を確認する
【正しい処分方法】
・家電量販店などに設置された小型充電式電池の回収ボックスを確認する
・自治体の回収ルール(拠点回収・有害ごみ・小型家電回収など)に従う
・膨らんだ製品や破損品は、回収ボックスに入れられない場合があるため自治体やメーカーへ相談する
・処分まで保管する場合は、直射日光を避け、可燃物から離した涼しい場所に置く
捨て方に迷ったら、自治体のホームページや消防庁のリチウムイオン電池総合対策ポータルサイトで確認しましょう。
飛行機に乗る予定がある人は「持ち込みルール」も確認を
旅行や出張でモバイルバッテリーを持ち運ぶ機会が多い夏。飛行機に乗る際は、発火リスクへの対策として持ち込みルールが定められています。
モバイルバッテリーは一般的に預け荷物ではなく機内持ち込みで扱われ、容量(Wh)による制限や個数のルールがあります。航空会社や国・地域によって細かな運用が異なるため、旅行前に確認しておきましょう。
詳しいルールと容量の計算方法は、こちらの記事で解説しています。
▶ モバイルバッテリーは飛行機に持ち込める?容量制限・個数・最新ルールを解説
また、夏の相棒ハンディファン(携帯扇風機)もリチウムイオン電池製品です。暑さ対策グッズの安全な使い方は、こちらの記事も参考にしてください。
▶ 【2026年最新】夏を乗り切るひんやりグッズおすすめ|タイプ別の選び方と使い方
よくある質問(FAQ)
Q1. モバイルバッテリーの事故はなぜ夏に多いのですか?
A. リチウムイオン電池が高温に弱いためです。高温環境では内部温度が上がり、発熱・破裂・発火につながるおそれがあります。NITEのデータでも、事故件数は春から夏にかけて増え、8月にピークを迎えます。
Q2. 車内に置きっぱなしはどのくらい危険ですか?
A. 非常に危険です。真夏の車内は短時間でも高温になり、モバイルバッテリーの発火につながるおそれがあります。夏場は車内・窓際・直射日光下に放置しないことを徹底しましょう。
Q3. バッテリーが膨らんでいますが、まだ使えますか?
A. 使用も充電もやめてください。膨らみは内部でガスが発生している可能性がある危険サインです。圧迫・衝撃・高温・充電によって発火リスクが高まります。
Q4. 充電中に熱くなるのは普通ですか?
A. 多少温かくなることはありますが、「触れないほど熱い」のは異常です。すぐに充電を中止し、可燃物から離して、再使用は避けましょう。
Q5. 発火したらどう消火すればいいですか?
A. まず身の安全を確保してください。小型のモバイルバッテリーで火花や炎の勢いが収まってきた場合は、大量の水や消火器で消火し、可能なら水をためたバケツに入れて再発火を防ぎます。危険を感じたら無理をせず119番通報してください。
Q6. 使わなくなったモバイルバッテリーはどう捨てればいいですか?
A. 普通ごみに混ぜるのは避け、家電量販店などの回収ボックスや自治体の回収ルールに従って処分してください。膨張・破損したものは回収できない場合があるため、自治体やメーカーに相談しましょう。
Q7. 安全なモバイルバッテリーの見分け方はありますか?
A. PSEマークの有無、販売元の信頼性、保護回路の記載、リコール対象ではないかを確認しましょう。極端に安い無名製品や、販売者情報が不明確な商品は避けるのが無難です。
Q8. 政府の安全規制強化では何が変わるのですか?
A. 報道によると、第三者機関による検査の義務化、技術基準の強化、製造業者の品質管理措置の義務化などが検討されています。制度化されれば、製造段階のチェックが強まり、粗悪品の流通抑制につながる可能性があります。
Q9. 飛行機にモバイルバッテリーは持ち込めますか?
A. 一般的に預け荷物には入れられず、機内持ち込みで扱います。容量や個数の制限があるため、搭乗前に航空会社の最新ルールを確認してください。
結論|夏のモバイルバッテリー安全6か条
- 事故は春から夏に増え、8月がピーク。真夏の車内・直射日光下には放置しない
- 「触れないほど熱い」「膨らんでいる」「異臭がする」は即使用中止
- 落下・圧迫・布団の中での充電もショートや発熱の原因になり得る
- 発火時は身の安全を最優先。小型製品なら大量の水や消火器で冷却
- 処分は回収ボックスや自治体ルールで。買い替えはPSEマーク・販売元・リコール情報を確認
- 政府は第三者機関検査の義務化など、安全規制の強化を進める方針
まとめ|「小さな電池」への意識が、大きな火災を防ぐ
【この記事のポイント】
知る
・リチウムイオン電池搭載製品の事故は5年で2,140件。8月にピーク
・高温・衝撃・圧迫・劣化が発火リスクを高める
・政府は第三者機関の検査義務化など、安全規制強化を進める方針
見極める
・異常発熱と膨らみは買い替えのサイン
・PSEマーク、販売元、リコール情報の確認を習慣に
・制度化後は第三者検査を受けた製品かどうかも選び方の基準になる可能性
備える
・発火時は身の安全を最優先に、可能なら大量の水で冷却
・処分は回収ボックスか自治体ルールで
・防災用として保管する場合も、定期的に状態を確認する
【最後に】
モバイルバッテリーは、いまや生活と防災に欠かせない存在です。だからこそ、「正しく選び、正しく使い、正しく手放す」という基本が、あなたと家族、そして周囲の安全を守ります。
そして今後は、消費者の使い方だけでなく、製造段階のチェックや品質管理もより厳しく見られる時代に入っていきます。まずは今日、お手元のバッテリーに膨らみや異常発熱がないか、真夏の車内や窓際に置きっぱなしのものがないか、確認してみてください。
※この記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。事故データはNITE・消防庁・関係省庁の公表情報および報道情報に基づく一般的な情報提供です。制度改正の詳細は今後の政府発表により変更される可能性があります。製品の取り扱いは各メーカーの取扱説明書に、処分方法はお住まいの自治体のルールに従ってください。