「親の介護が必要になったけど、仕事はどうすればいい?」「介護のために仕事を辞めるしかない?」突然の親の介護で悩んでいる方は少なくありません。実際、55〜59歳の雇用労働者の10人に1人以上が介護に直面しています。
しかし、介護のために仕事を辞める「介護離職」は、収入が途絶えるだけでなく、将来の年金額も減ってしまうため、できるだけ避けたいところです。この記事では、親の介護と仕事を両立するための方法と、使える制度を2026年最新情報で徹底解説します。
親の介護と仕事の両立は可能?

介護離職の現状
総務省「令和4年就業構造基本調査」によると、55〜59歳の雇用労働者の10人に1人以上が介護に直面しています。
介護を理由に離職する人は年間約10万人。しかし、実は介護と仕事の両立は可能です。適切な制度とサービスを使えば、仕事を続けながら親の介護ができます。
介護離職のリスク
・収入が途絶え、生活が困窮
・将来の年金額が減少
・社会とのつながりが失われ、孤立
・介護疲れ、介護うつのリスク増加
・介護が終わった後の再就職が困難
介護離職は、本人にとっても家族にとっても、良い結果をもたらさないことが多いのです。
仕事と介護の両立に使える制度

2025年4月に育児・介護休業法が改正され、介護離職防止のための制度がさらに強化されました。ここでは、仕事と介護を両立するために使える主な制度を紹介します。
1. 介護休業(長期の休み)
概要:要介護状態の家族を介護するため、最大93日間休業できる制度
取得できる期間:
・対象家族1人につき、通算93日まで
・3回まで分割取得可能
対象者:
・男女問わずすべての労働者(日雇いを除く)
・2025年4月から、入社6ヶ月未満の労働者を労使協定で除外できなくなった
対象家族:
・配偶者(事実婚を含む)
・父母、子
・配偶者の父母
・祖父母、兄弟姉妹、孫(同居・扶養している場合)
給付金:
介護休業給付金として、休業前賃金の約67%相当が雇用保険から支給される
申請方法:
休業開始の2週間前までに書面で申請
使い方のポイント:
介護休業は「介護体制を整える」ための準備期間として使うのが基本です。この93日間で、介護サービスの選定、ケアマネージャーとの調整、介護施設の見学など、長期的な介護体制を構築します。
2. 介護休暇(短期の休み)
概要:通院の付き添いや介護サービスの手続きなど、短期的な対応のために取得できる休暇
取得できる日数:
・対象家族が1人の場合:年5日
・対象家族が2人以上の場合:年10日
取得単位:
・1日単位
・時間単位(2021年1月から)
対象者:
・男女問わずすべての労働者(日雇いを除く)
・2025年4月から、入社6ヶ月未満の労働者も対象に
給付金:
なし(原則無給、ただし会社によっては有給の場合も)
申請方法:
当日に口頭でも申請可能
使い方のポイント:
突発的な対応に便利。「親が急に体調を崩して病院に付き添う」「ケアマネージャーとの打ち合わせ」「介護サービスの契約手続き」など、短時間の用事に使えます。
3. 短時間勤務制度
概要:所定労働時間を短縮できる制度
内容:
以下のいずれか1つ以上を会社が選択して導入
・短時間勤務制度
・フレックスタイム制度
・時差出勤制度
・介護費用の助成措置
対象者:
要介護状態の家族を介護する労働者
期間:
利用開始から3年以上
使い方のポイント:
毎日の介護に対応しやすくなります。例えば、「朝は親の朝食介助をして、遅めの出勤」「夕方早めに退社して、夕食介助」などが可能になります。
4. 所定外労働の制限(残業免除)
概要:所定労働時間を超える残業を免除してもらえる制度
対象者:
要介護状態の家族を介護する労働者
※要介護認定を受けていなくても、「常時介護が必要な状態」であれば対象になります。
期間:
制限なし(必要な期間)
使い方のポイント:
「残業があると介護に間に合わない」という場合に有効。定時で帰宅できるため、夕方の介護に対応できます。
5. 時間外労働の制限
概要:1ヶ月24時間、1年150時間を超える時間外労働を制限できる制度
対象者:
要介護状態の家族を介護する労働者
申請方法:
1ヶ月前までに申請
6. 深夜業の制限
概要:午後10時〜午前5時の深夜労働を制限できる制度
対象者:
要介護状態の家族を介護する労働者
申請方法:
1ヶ月前までに申請
介護休業給付金とは

介護休業を取得した場合、雇用保険から「介護休業給付金」が支給されます。
給付額
賃金の約67%
計算式:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
例:
月給30万円の場合
→ 賃金日額:30万円 ÷ 30日 = 1万円
→ 1ヶ月(30日)の給付金:1万円 × 30日 × 67% = 約20万1,000円
受給条件
・雇用保険に加入している
・介護休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上ある
・介護休業期間中、賃金が休業開始時の80%未満である
申請方法
1. 介護休業終了後、会社を通じてハローワークに申請
2. 必要書類:介護休業給付金支給申請書、雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書、賃金台帳、出勤簿など
注意点
・給付金は非課税
・93日間を3回に分割した場合、それぞれの期間ごとに申請
・介護休業給付金の支給期間中は、健康保険料・厚生年金保険料の支払いは継続
| 制度 | 内容 | 取得期間 | 給付 |
|---|---|---|---|
| 介護休業 | 介護体制を整えるための休業 | 通算93日(3回まで分割可) | 賃金の約67% |
| 介護休暇 | 通院付き添いなど短期休暇 | 年5日(2人以上で10日) | 原則無給 |
| 短時間勤務 | 労働時間を短縮 | 3年以上 | 給与は会社規定 |
| 残業免除 | 所定外労働を免除 | 期間制限なし | 給与変動なし |
介護保険サービスを活用する
仕事と介護を両立するには、介護保険サービスの活用が不可欠です。「自分で全部やろう」と思わず、プロの力を借りましょう。

介護保険サービスとは
40歳以上の人が加入する「介護保険」から、介護が必要な人に提供されるサービスです。
対象者:
・65歳以上で要介護認定を受けた人
・40〜64歳で特定疾病により要介護認定を受けた人
主な介護保険サービス
訪問サービス:
・訪問介護(ホームヘルパー)
・訪問看護
・訪問入浴
通所サービス:
・デイサービス(日帰り介護)
・デイケア(日帰りリハビリ)
短期入所サービス:
・ショートステイ(短期間の施設入所)
施設サービス:
・特別養護老人ホーム
・介護老人保健施設
・介護療養型医療施設
利用の流れ
1. 要介護認定の申請(市区町村の窓口)
2. 認定調査(訪問調査)
3. 要介護度の決定(要支援1〜2、要介護1〜5)
4. ケアマネージャーの選定
5. ケアプランの作成
6. サービス利用開始
自己負担額
原則、サービス費用の1割(所得により2〜3割)
| サービス | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 訪問介護 | ホームヘルパーが自宅訪問 | 生活支援 |
| デイサービス | 日帰り施設介護 | 家族の負担軽減 |
| ショートステイ | 短期間の施設入所 | 家族の休養 |
| 特養 | 長期入所施設 | 常時介護 |
仕事と介護を両立するコツ
1. 早めに会社に相談する
介護が始まったら、できるだけ早く上司や人事部に相談しましょう。黙って無理を続けると、仕事にも介護にも支障が出ます。
会社には、介護休業・介護休暇を提供する義務があります。遠慮せずに利用しましょう。
2. 一人で抱え込まない
「親の介護は子どもの責任」と思い込み、一人で抱え込む人が多いですが、これは危険です。
・きょうだいで分担する
・介護保険サービスを利用する
・ケアマネージャーに相談する
・地域包括支援センターに相談する
プロの力を借りることは、恥ずかしいことではありません。
3. 介護休業は「準備期間」として使う
介護休業は93日間しかありません。「93日間、自分が介護する」のではなく、「93日間で、長期的な介護体制を整える」ために使いましょう。
・ケアマネージャーを決める
・介護サービスを契約する
・介護施設を見学する
・きょうだいで役割分担を決める
4. 介護休暇を賢く使う
介護休暇は、年5日(家族2人以上なら10日)、時間単位で取得できます。
・病院の付き添い:半日
・ケアマネとの打ち合わせ:2時間
・介護サービスの手続き:3時間
このように、細かく使えます。
5. 短時間勤務・フレックスを活用
毎日の介護がある場合、短時間勤務やフレックスタイム制度を活用しましょう。
・朝:親の朝食介助をしてから出勤
・夕方:早めに退社して夕食介助
このような働き方が可能になります。
6. 自分の健康を守る
介護と仕事の両立は、想像以上に大変です。自分の健康を犠牲にしないよう、以下を心がけましょう。
・十分な睡眠
・バランスの良い食事
・適度な運動
・ストレス発散の時間を持つ
・定期的に健康診断を受ける
介護離職を避けるべき理由
1. 収入が途絶える
介護にはお金がかかります。介護保険サービスを使っても、自己負担が発生します。仕事を辞めて収入が途絶えると、生活が困窮します。
2. 将来の年金が減る
厚生年金に加入している期間が短くなると、将来受け取れる年金額が減ります。介護が10年続いた場合、年金額は大幅に減少します。
3. 社会とのつながりが失われる
仕事を辞めると、社会とのつながりが失われ、孤立しやすくなります。介護疲れ、介護うつのリスクも高まります。
4. 再就職が困難
介護が終わった後、再就職しようとしても、ブランクが長いと困難です。特に50代以降の再就職は非常に厳しいのが現実です。
よくある質問
Q1:介護休業は何回でも取れる?
A:対象家族1人につき、通算93日まで、3回まで分割して取得できます。4回目以降は取得できません。
Q2:介護休暇は有給?
A:原則無給ですが、会社によっては有給の場合もあります。就業規則を確認しましょう。
Q3:介護のために転職すべき?
A:まずは今の会社で両立できないか検討しましょう。介護休業や短時間勤務を使えば、多くの場合、両立可能です。安易な転職はおすすめしません。
Q4:親が要介護認定を受けていないと介護休業は取れない?
A:要介護認定は必須ではありません。「2週間以上の期間にわたって常時介護が必要な状態」であれば取得できます。ただし、要介護認定を受けておいた方が、介護保険サービスが使えるため便利です。
Q5:遠距離介護の場合はどうすれば?
A:介護休業・介護休暇は、遠距離介護の場合も取得できます。ただし、遠距離介護は頻繁に帰省する必要があり、負担が大きいため、親の近くに引っ越す、または施設入所を検討することも選択肢です。
まとめ:介護離職せず、仕事と両立しよう

親の介護が始まっても、仕事を辞める必要はありません。
使える制度:
・介護休業(93日、給付金あり)
・介護休暇(年5日、時間単位可)
・短時間勤務・フレックス
・残業免除
・介護保険サービス
両立のコツ:
・早めに会社に相談
・一人で抱え込まない
・介護休業は「準備期間」として使う
・介護保険サービスを積極的に活用
・自分の健康を守る
介護は突然始まります。いざという時に慌てないよう、この記事で紹介した制度を頭に入れておきましょう。
2025年4月の法改正で、入社6ヶ月未満の労働者も介護休業・介護休暇が取得できるようになりました。より多くの人が、仕事と介護を両立できる環境が整いつつあります。
一人で悩まず、会社、ケアマネージャー、地域包括支援センターなど、周りの力を借りながら、仕事と介護の両立を目指しましょう。